「バリアフリー」という綺麗ごと

クレジットカードでこつこつ溜めていたマイレージが貯まったとき、たまには親孝行してやろうと思って
「2人で温泉でも行っておいでよ」
と両親のために飛行機を予約した。温泉宿も良いところを見つけた。両親はとっても喜んでくれ、旅行を楽しみにしていた。しかしその矢先、母が脳出血に倒れた。もちろん旅行はすべておじゃんになった。

あれから4年。ダメになった温泉旅行に連れていってやりたいと思った。母も元気になったことだし、ウィーンに比べたら国内旅行なんて楽なものだ。そう思って宿を探し始めた。

それで気づいたんだけど、バリアフリーの宿ってすごく増えてる。車椅子でも使えるホテル、バリアフリールームのある宿なんてもう珍しくもない。ただ、母は温泉に入りたがっていた。だから今はバリアフリーの温泉がある宿を探しているところ。

調べてみると、かつて行くはずだった温泉地にもバリアフリーで有名な宿があった。入浴リフトつきと書いてある。だけど公式サイトでは詳しいことはよくわからなかったから問い合わせてみた。私ひとりで母をお風呂に入れるつもりだから、細かいことを知りたかった。
そしたら返ってきた答えは

「当旅館は軽度の方のみを対象とさせて頂いております」

この一言で、ウィーンよりも日本の温泉宿のほうがずーっと遠いことが分かった。

とはいえ、私の訊き方が悪かったのだと反省もしている。がつがつ聞きすぎたから警戒されてしまったのだ。「スタッフが介助を押し付けられるかもしれない」と恐れているのがひしひしと伝わってきた。(そんな怖いこと頼むわけないのに!でも、そういう人もいるんだろうな)私は公式サイトにも他のサイトにも書いてない備品とかを知りたかったんだけど、結局、それすら答えてもらえなかった。

ただモンスター客を断る口実だったのか、ぽろっと本音が出ちゃったのかは分からないけど、はっきりと
「軽度の方のみ」
と言われたのはショックだった。とにもかくにも「重度の人には来てほしくない」感が満載だったのだ。それならそうと公式サイトに書いといてくれたら期待もしないのに。軽度なら浴用リフトいらんやん。リフトあったら重度OKやと思うやん…。

バリアフリーバリアフリーと宣伝しているが、たとえどんなに設備が充実していたとしても、
「めんどくさいから来てほしくない」
「車椅子なんだから我慢しろ」
その気持ちこそ一番大きなバリア(障壁)だと痛感した。

よく言われることだけど、障害者が思うバリアフリーと世間的なバリアフリーの意味合いは大きく違う。手すりさえつけていれば大きな階段があってもバリアフリー、たとえ車椅子が入らなくてもちょっとだけ広かったらバリアフリー、もちろん昔よりずっと良くはなっているけど
「なんちゃってバリアフリー」
と呼ばれる施設がまだまだ多い。

つまり、それだけ車椅子が外に出ていないということだ。周りが障害者に慣れていないということだ。その施設には車椅子ユーザーがあんまり来ないから、ちゃんと対応する必要もないと思ってるのかもしれない。対応の仕方もわからないし、めんどうだから対応もしたくないだろう。ケガさせたら怖いし!

近頃よく『日本はこんなに素晴らしい』みたいな番組をやってるけど、50年前と変わらず
「障害者はおとなしく家にいろ」
なんて言われる国はちっとも素晴らしくない。

車椅子よ外へ出よう。超高齢化社会の日本の、心のバリアフリー化をすすめるために。

本日の猫写真。


(毛布でねむねむのシシィさん。)

昔、鳥取の温泉宿に泊まったときのことを思い出した。公式サイトにはバリアフリーなんて全然書いてなかったんだけど、泊まれるかどうか尋ねると
「車椅子?どうぞどうぞ」
と言ってくれた。現地にいくと
「段差もあるけど、担ぎますよ!」
「食事は一口大にしますか?ミキサーもできますよ」
「おばちゃんですがなんでも手伝いますから相談してください!」
本当にあったかい宿だった。バリアフリーって設備のことじゃないなあ。

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コメント

  1. pierre小姐 より:

    だださん こんばんはー!

    そうですよねー、もっと車椅子でどこでも行きたいなぁ
    ケアマネさんに「毎週日曜日三人でスーパーに買い物に行ってる」って言ったら
    え、そうなんですかって目ェまんまるにされてました。
    私はスシローの店の扉が開いたままにできないのがくやしいっす(笑)
    開けっ放しにされちゃまずいからだと思うのですが、二人で行くのは難儀しそうで。
    でもこないだ父と二人で行ったときは、行きも帰りも、通ってるお客さんたちが開けてくれました。
    ほんま、結局なんでも「人」ですよねー。
    車から父を降ろすときに、「お手伝いすることはないですか」って
    声をかけてくれた人とかもいるし。声かけてくれるだけで相当嬉しい。

    そうそう、昨日のキーッてなっちゃう話ですが、そりゃもうありありありますよー
    私のホルモンバランスの加減もあるんかなあとか思ってしまったり。
    家族ってそんなもんですよね。
    それでもそのときキーッてなるだけで、次の日はすっかり忘れてるし。
    入院してたとき渇望した、「三人でごはんを食べて、なんとなく過ぎていく平凡な毎日」を取り戻して
    なんだかんだ言いながらやっぱり幸せなんですよねえ。

    • だだ より:

      >私はスシローの店の扉が開いたままにできないのがくやしいっす(笑)
      あるあるですねー!
      うちは病院の扉が自動ではないうえにクソ重くて開けたままにできないタイプで、いつも通りがかりの人に助けられています。
      誰もいないときはお尻で開けときます(笑)
      声かけてもらうと本当にうれしいですよね!
      たとえ助けが必要ないときでも!
      なんかほっとします。

      キーってなっちゃう話。
      >私のホルモンバランスの加減もあるんかなあとか思ってしまったり。
      なるほどー私も更年期近いのかなーって年齢になりましたし(笑)

      >入院してたとき渇望した、「三人でごはんを食べて、なんとなく過ぎていく平凡な毎日」を取り戻して
      そうそう、うちもそうでした。
      ただ一緒にご飯を食べて、一緒にコーヒーを飲んで笑えることがどんなに幸せなことか。
      おかげで思い出したので噛みしめておきます。

  2. poko より:

    はじめまして。
    私自身車椅子で生活していて、よく1人で外出しているのですが、バリアフリーについてよく考えさせられます。
    普通に歩いてた道なのに車椅子になると真っ直ぐ舗装されてない道に苦戦し、少しの段で引っかかり、坂とか必死です。
    その様子を見て温かく手を差し伸べる人は居るのがありがたいです。
    でも、若い人はあまり無関心。
    介護と言うのが身近じゃないからかもしれないけど、何か悲しいです。
    もっとみんなが関心を持ってくれたらなぁと思います。
    ほんと建物や道のバリアフリー、そして心のバリアフリーがもっと進む国になって欲しいです。

    • だだ より:

      初めまして!
      おひとりだと、何かあったときに本当に困りますね。
      坂道なんで押して歩くだけでも大変なのに…。
      >でも、若い人はあまり無関心。
      >介護と言うのが身近じゃないからかもしれないけど、何か悲しいです。
      たしかに声をかけてくださるのは圧倒的に年配の方が多いですね。
      若い人には、車椅子自体、見慣れないんでしょうね。
      今は核家族がほとんどですし、どうしたら良いのか分からないのかもしれません。
      もういっそのこと、義務教育で介護の授業やってくれたらいいのに!って思います。

      去年ウィーンに行ったとき、町自体は石畳とかもいっぱいあるのに、どこでもごく自然に助けてもらえるから、この町ではみんなが車椅子に慣れていて、車椅子も「普通」なのだと感じました。日本も早くそうなればいいなと願います。

  3. コッシー より:

    だださん
    お久しぶりです。春らしくなってきましたね。
     
    入浴リフトつきの温泉旅館あるんですね。
    石川県にはなさそうです。
     
    折角の温泉でビジネス旅館みたいなお風呂じゃ
    イマイチですしね。
     
    私も長距離移動が可能になってきたので
    バリアフリーの温泉探していました。
    なかなか見つからなかったのですが
    部屋風呂、段差無し、リクライニングベッドの旅館見つけました。
    今度、行ったら報告しますね。
     
    シャワーキャリーとか持っていくものは
    たくさんになりそうですが、楽しみです。

    • だだ より:

      おおお、シャワーキャリー持っていかれるんですか!さすが!
      >部屋風呂、段差無し、リクライニングベッドの旅館
      おお、よさそうですね!
      リクライニングベッドすごい!
      レポ楽しみにしております!

      最近は設備投資している宿も増えて、リフトだけでなくスロープで車椅子のまま入浴というところもあるんですよね。
      でも一番大事なのはスタッフのバリアフリー度だと思うので、そのへんもまた教えてください!

  4. アワキビ より:

    おはようございます。
    そうですよ、「なんちゃってバリアフリー」をもろに体験しましたよ、去年。
    温泉でなくても、最近は、ビジネスホテルに近いタイプのホテルにも、バリアフリーのお部屋はあるんですけど、普通タイプよりも高いんです。
    なぜ、割り増しを払わねばならないのか?って思いませんか?
    確かに広い部屋にはなりますがね、特別な贅沢を望んでいるわけではなく、他の人と同程度に過ごせることを望んでいるのに。
    これを変えるには、だださんがおっしゃるように、どんどん車椅子で出掛けていく人が増えて、意見を言う人が増えることですね。

    • だだ より:

      そういえば、去年ビジネスホテルに泊まったとき、バリアフリールームはちょっと割高だなと思いました。
      理由は、他の部屋より広いから、のようでした。ぜんぜん不必要なくらいに広かった(笑)。
      同じように過ごしたいだけなのですけどね。
      >特別な贅沢を望んでいるわけではなく、他の人と同程度に過ごせることを望んでいるのに。
      そのとおりです!
      あちこちの温泉宿を調べてみたら「特別室のみバリアフリー」というところも結構ありました。
      バリアフリーってお互いにお金がかかりすぎる場合が多いんです。
      これではなかなか「普通」にならないわけですね。
      でも、すっごい手作りでバリアフリー対応しているユースホステルもあるんですよ!
      めっちゃ感動したので近いうちに記事にしますね。